2009年6月17日水曜日

03017■慈覚大師と蝦夷征服の手段











不思議空間遠野より








「西の空海、東の円仁」と云われるほど、西と東を競うように仏教を広めた両雄である。それほど東北の地には、慈覚大師の伝説が多く存在する。

東北の寺には、慈覚大師作とする仏像などを有している寺が169寺ある。それだけ熱心に、東北の隅々をまわったのだろう。そこには純粋な,地霊と犠牲になった人々の霊を祈り鎮める為意思があったのだろう。



円仁の属する天台宗は、格別に、桓武天皇に結び付いて、天下第一仏教となった。その桓武天皇は、平安京を造る事に加え、東北の蝦夷を支配する事を意図した天皇である。そこで天台宗は、鎮護国家を目指すと共、蝦夷の地を鎮め護る事を、その至上の命題とし、選ばれたのが慈覚大師円仁であった。
早池峰神社に結び付いた初めての宗派が天台宗というのには、こういう背景もあった。その為に、早池峰縁起にも、多大な影響があったと思われる。現在伝わる早池峰縁起にも、天台宗の意向が入り込み、それ以前の縁起をぼかしている可能性はあるだろう。

この天台宗の支配は、過去に伝わる神々を封印する事でもあった。新しくも強いい宗教とは、既存の信仰を根絶やしにするという意図をも含んでいる。その意図を伝えるの正史ではなく、伝説や説話の世界にあるのだろう。


「今昔物語」の話に、推古天皇が飛鳥の地に、後に元興寺を建立しようとしたが、そこには樹齢もわかりかねぬ欅の大木があった。その大木を切り倒そうとする者は、皆死んでしまうのだという。しかし、その大木を切り倒す方法は「大祓祝詞」を読んでいる最中に切るというものだった…。

「続日本後紀」では、山城国葛野郡にあった、やはり欅の大木を切ってしまった為、神の祟りがあり、長雨が続いたとの記述がある。







どうも樹木の歴史を調べると、仏教が導入されると共に、寺院建設や、仏像の彫像が大々的に始まり、沢山の森林が伐採され無くなったようだ。その背景には、縄文時代から続く樹木信仰を含む、古代信仰の廃絶の意図もあったようだ。

天台宗の「阿娑縛妙」には、近江の国の霊木の為に疫病が流行り、その霊木を切り倒して琵琶湖に入れてしまったと。ところが、その霊木は流れ流れて、流れ着く先に疫病を流行らせた為、その霊木から十一面観音を彫り上げたのが、長谷寺に伝わる十一面観音なのだという。

霊木の祟りとは、古来からの神の祟りであるといい、その祟りは琵琶湖の水と相まって、その祟りが増幅されたのだという。それを鎮めたのは、仏教である…という、仏教の力を誇示する内容の話が掲載されている。

ところが「長谷寺縁起」は、上記の伝説とはまた違ったものであるが、今現在の長谷
寺に伝わる縁起よりも古いであろうという縁起は「三宝絵詞)」永観三年(984)成立
の説話集だとも云われている。

この説話では、やはり近江の国の大木が祟りをなしている為、死ぬ者が相次いでい
たという。そこにたまたま大和国葛城下郡に住む”出雲の大みつ”という人物が、この
大木で十一面観音を彫ろうと思い、大和国当麻まで霊木を曳いてきたが、願い叶う前
に死んでしまったと。

しかし娑弥徳道という者が元正天皇と藤原房前の援助を得て、その霊木から神亀4年
(727)についに十一面観音を彫り上げたという。そして夢のお告げで、その十一面観
音を方八尺の巌の上に立てたという話がある。ところでその霊木とは、楠であったと。

とにかく伝説や説話を読んで感じるのは、仏教の力が増大し、更に布教をする為障害となる、古来から続いていた古代信仰の廃絶が目的だったのだろう。巨木は、縄文時代の信仰であったが、弥生時代以降田畑が広げる為の開墾には巨木が邪魔となった。
正義を新たな宗教と文化に結び付ける為の、説話集や伝説が作られたのは、あくまで蝦夷の地を宗教的と文化的に征服する意味があったのだと思う。


ところで瀬織津姫の本地垂迹は十一面観音である為、先に述べた説話や伝説に瀬織
津姫と繋がる気がするが、それはさて置く事とする。ただ慈覚大師円仁が過去の神を
仏像で封印してきた歴史がある以上、瀬織津姫が古代から信仰されてきた女神である
のならば、当然の如く仏像を重ねる事によって、封印されたのだろうと考える。

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(まとめ)
・西の空海、東の慈覚大師(円仁)と、競うように仏教を広めた (国の方針で)二人。
仏教の力が増大し、更に布教をする為障害となる、古来から 続いていた古代信仰の廃絶が目的だったのだろう。
・巨木は、 縄文時代の信仰であったが、弥生時代以降田畑が広げる為 の開墾には巨木が邪魔となった。・・・なるほど!
・瀬織津姫とは天照大神の12人の妃のうちの正妻である。

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