秋田県に関することを抜き出します
ー 東日流外三郡誌の世界 ー ☆ 目 次 ☆ 1、はじめに 2、「東日流誌」の成り立ち 3、綴史密命之事 4、東日流外三郡誌附巻 5、述言 6、総結編二序言 7、十三湊脚渉記 8、北辰懐古 9、孝季の手紙より 10、菅江真澄殿、津軽藩捕らわれの事 ///////////////////////////////////////////////////////////////// 1、はじめに ツ ガル 「東日流誌」とは、その昔蝦夷と呼ばれた人たちの記録集である。 1789年蝦夷直系である秋田家(三春藩五万五千石、郡山市近辺)の当主秋田千季(ユキスエ)は、息子の秋田孝季(タカスエ)に蝦夷関係資料の収集を命じた。孝季(秋田県、土崎)が義弟の和田長三郎(津軽、五所川原市飯詰(イイズメ)と二人で、三十三年間にわたり収集記録したのが「東日流誌」群である。ここには、蝦夷一族に関連した歴史、宗教、言語、風俗習慣その他、集められ得る限りの資料が収められている。なお、菅江真澄(スガエマスミ)も一時期この収集に参加している。 現在、これらの資料は、津軽飯詰の和田家に保存されており、 「東日流外三郡誌」(弘前市、北方新社)(東京、八幡書店)、 「東日流六郡誌絵巻」(弘前市、津軽書房)、 「東日流六郡誌」(津軽書房)などが発表されており、「東日流内三郡誌」は未発表である。 この東日流外三郡とは、ほぼ津軽半島部にあたり、内三郡はそれ以南の津軽の内陸部にあたる。「東日流誌」をみての最大の驚きは、蝦夷と呼ばれ蔑まれ続けた人たちが、思いもよらぬ人間的で豊かな文化を持っていたこと。またこの一族が、荒吐(アラハバキ)族-安倍氏-安東氏-秋田氏と名を代えながらも明治維新、そして現在に到達しておりそこに信じられぬような歴史を持っていることである。 1、「東日流誌」のはじめに! 初代津軽藩主、大浦為信(タメノブ)は、徳川家から藩政を預けられて以来、津軽の地に古くから残る安東氏関係の事物を総て消滅さすことを計った。そのため、古記録の消却処分、安東氏の信仰したアラハバキ神の壊滅、安東(藤)氏関係の民謡、民話の禁止を命じた。津軽藩では古記録を提出した者を藩士として取り立てる約束、アラハバキ神関係の石塔を地雷で爆破する行為まで行なっている。 大浦氏の行為の中でいちばん安東一族を怒らせたものは、十三湊に安東水軍の基礎をつくった藤原秀栄(ヒデヒサ)を、大浦氏が自分の祖と語ったことといわれる。このため安東氏唯一の後裔である秋田家では、大浦氏の偽を発くため証拠書類を揃え徳川家に提出したという。しかし徳川家ではこの書類を全く無視し、あまつさえ秋田家の国替えを命じた。徳川家、大浦氏に対する怒りが、「東日流誌」作成の引金であり、それを完成に導いた刺激剤といわれる。 一説には、天明五年(1785年)三春藩城下に火災があり古資料が失われ、そのため改めて記録が収集されたともいう。しかしいずれにせよ、秋田孝季(タカスエ)によって提出された記録は、徳川家にとってあまりにも過激だったため、とうてい受け入れきれず返却されている。 「外三郡誌」の出発時点(1789年)で、秋田孝季は五十才前後、和田長三郎は三十才前後と考えられる。したがって孝季は五十才頃から八十才までの三十三年間を、この「東日流誌」の完成のために捧げたことになる。 2、「東日流誌」の成り立ち 寛政元年(1789年)、私は父、千季(ユキスエ)に呼ばれ三春(福島県郡山市近辺)に出かけた。父は人払いをし、安東一族の故事来歴を諸国を巡り綴るよう申しつけた。もとより文筆つたない自分であるので断わったが許されず、若干の費用を授けられた。自分は秋田の住まいなので急ぎ帰り、津軽に住む義弟、和田長三郎を呼び相談した。まず津軽六郡を巡り、多くの祖歴を得た。更に渡島に渡り原住民にその歴史を尋ねたが、正史に記されたものと実際が余りに違っているのを知り怒りを覚えた。その後六十余州を巡り、一族縁者から史書を得て、ここに「東日流外三郡誌」とし、更に「東日流内三郡誌」を綴った。 9、「孝季の手紙より」 菅井殿が訊ねてきて、たまたま荒吐族が話題になった。菅井殿の史観は我々と違っていて、荒吐神とは源九郎義経のアラハバキ、すなわち膝当てのことと強情を張って譲らない。拙者は笑止千万と、どなりつけたいのを我慢し、菅井殿には帰ってもらった。これもいた仕方ない事である。(菅井殿とは菅江真澄のことである。) 10、「菅江真澄殿、津軽藩捕らわれの事」 薬師菅江真澄は、我々とともに荒吐神、安倍・安東の古事を探り巡っていたが、この秘密を津軽藩関所で発見され捕らわれた。これによって、彼が長年にわたって記述してきた史伝書三十八巻も消却されたのは、誠にやるかたない。本巻の著書に彼の記名があるが、これは本巻成立の証人としてのみ記して置いたものである。 |
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